PP701 | Minimal Chair - Rare Edition 2026
Hans Jørgensen Wegner
自宅の食卓に置く椅子が、どうしても見つからなかった。それがはじまりでした。1965年、ハンス・J・ウェグナーはコペンハーゲン北郊ゲントフテに自邸を完成させます。壁の石をどこに積むか、扉の納まりをどうするか、そんな細部のひとつひとつまで自らの手で決めた家でした。けれど、そこに置く食卓の椅子だけが、いつまでも思い描いた姿にたどり着かない。ならば描くしかない——そうして生まれたのが、この椅子です。
はじめは、たった6脚。家族が食卓を囲むためだけの椅子でした。やがてヨハネス・ハンセン社によって製品となり、工房が幕を下ろしたのちはPP Møblerがその仕事を引き継いでいます。ウェグナーが生涯に残した500を超える作品のなかで、妻インガがいちばん好んだのはこの椅子でした。夫妻がその家で暮らした40年のあいだ、食卓の椅子が入れ替わることは一度もなかったといいます。
椅子が椅子であるために、本当に必要なものは何か。手のひらを笠木に沿わせると、その問いの答えが指先に返ってきます。平らに見えて、平らではない。緩やかな三次曲面のなかに、背をあずける人の輪郭があらかじめ彫り込まれているかのようです。身体を支えるいちばん近いこの場所にだけ、ウェグナーは無垢の木を残しました。
視線を笠木の中央に落とすと、色の違う木が十字に顔を出しています。薄く挽いた四枚の材を寄せ、契りで結び、そこから削り出された笠木。ウェンジにはメープル材を合わせています。隠せないなら、美しく見せればいい。継ぎ目を意匠へと導くウェグナーの思想が、この数ミリの線に宿っています。
そして、何よりものこの椅子の特徴となるのは、これを支えるステンレスの細い骨組み。重厚な木の仕事を数多く残したウェグナーの作品のなかでも珍しい存在です。静かな輝きをまとった金属の丸パイプは限界まで絞られていながら、腰を下ろしたときの安心感はいささかも損なわれません。木では到底描けない線が、ここでは素材の性質そのものから引き出されています。
木、革、そして金属。本来なら混ざり合わないはずの三者が、この椅子の上では静かに同居しています。曲げの微妙な角度は職人の永年の経験によって調整され、溶接の痕は磨きによって消され、どこからどこまでが一本なのか分からないほど滑らかにつながっています。表面のヘアラインは強い光沢をやわらげ、金属は木や革の隣で控えめに息をひそめる。床に触れる脚先のエンドキャップまで、斜めに落とされたその角度は人の手によって仕上げられたものです。
本モデルは、PP Møblerによる「Rare Edition」の限定品です。これほどまでに簡潔な姿だからこそ、木そのものの表情が立ち上がります。仕上げは木肌の質感をそのまま残すクリアバイオオイル。座面はスタンダードファブリックまたはスタンダードレザーからお選びいただけます。生産数は世界で30脚のみ。一脚ずつに限定を示す真鍮のプレートが取り付けられます。
こちらは、既に完売しており、残すところYLEMの在庫のために発注した2脚のみ。
(ウェンジ/スタンダードレザーブラック: 2026年10-12月頃入荷予定)
使い込むほどにそれぞれの素材は少しずつ深まっていきます。かつて、ウェグナーの家族の食卓を支えた椅子は、今度は私たちの食卓で時間を重ねはじめます。何世代にもわたって受け継ぐことのできる、生涯の道具としてふさわしい一脚です。
PP701
Hans Jørgensen Wegner | PP møbler
Denmark | 1965
樹種
ウェンジ
座面
スタンダードファブリック
セミアニリンレザー
スタンダードレザー
フレーム
ステンレススチール(ポリッシュ仕上げ)
仕上げ
クリアバイオオイル
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